高度な設定



業務用途を中心に、いまだユーザー数の多いWindows 7。2020年1月の延長サポート終了までには約3年の猶予があるが、先進国を中心にWindows 10のシェアは着実に伸びている状況だ。それを象徴するような現象が一部で話題になっているので取り上げたい。


●米国や欧米でWindows 7のシェアを上回るWindows 10

それは、米国でWindows 10のOSシェアがついにWindows 7を逆転したというトピックだ。StatCounterによる2016年12月のデスクトップOSシェア集計によると、Windows 10が31.44%で、Windows 7の31.04%をわずかだが上回った。

StatCounterは後述のNetMarketShareと合わせて、OSやWebブラウザの利用シェアを知るうえで有力な参考データとして知られる。ただし、両サイトは集計方法などの違いからシェアに乖離(かいり)が出やすい点はあらかじめお断りしておく。

こうした傾向は米国に限らず、先進国を中心に一部地域で当てはまる。

英国では、2016年6月時点で既に両OSの逆転現象が発生していた。2016年7月29日にWindows 7/8.1からWindows 10への無料アップグレードキャンペーンが終了し、終了直前まで移行ラッシュが続いたことは記憶に新しい。英国におけるWindows 10への移行は順調に進んでおり、そう遠くない時期にデスクトップOSシェアの5~6割を占めることになるだろう。

これとほぼ似たような推移をたどっているのがオーストラリアだ。調べてみるとニュージーランドもほぼ同じ遷移となっており、2016年6月が転換点だったことが分かる。

また多少の乖離はあるもの、フランスなど欧州の各国も英国に似たシェア推移を描いており、やはり無料アップグレードキャンペーン終了時期が1つの目安となっている。

ただ、IT投資には比較的保守的といわれるドイツでは移行に時間がかかっているようで、米国同様に2016年12月に初めて両OSのシェアが逆転している。

なお、StatCounterのシェアはユーザーのPC利用状況によってかなりの変動があり、必ずしもシェアの集計結果が安定しない。例えばアイルランドでは英国同様に2016年6月に両OSのシェアが逆転したものの、そこからわずか数カ月で再逆転している(つまりWindows 7のシェアが再びWindows 10を抜いた)。

とはいえ、地域ごとにシェアの推移に特色があるのは興味深い。

●日本でのシェアは小差ながら逆転には至らず

それでは日本のデスクトップOSシェアはどうだろうか。推移としては米国に似ているものの、まだWindows 10とWindows 7のシェアは逆転していない。しかし両OSのシェアが小差になってから半年近くが経過しており、2~3カ月のうちに逆転する可能性が高いと言える。

直近でMicrosoftが仕掛けるイベントとしては、Windows 10の次期大型アップデート「Creators Update」が2017年3月末ごろまでにリリースされる見通しだ。また、AR/VR向けの新プラットフォーム「Windows Holographic」などWindows 10の利用を前提とした新しい仕組みも整備されつつある。レガシーな資産にこだわりがない限り、Windows 10の利用メリットは今後も高まっていく。

課題とみられていたゲーム用途でもWindows 10のシェアは伸びており、ゲーム配信プラットフォームのSteamにおけるOSシェアは、2016年12月にWindows 10が50%を超えてトップとなり、3割強のWindows 7を引き離している状況だ。

●ワールドワイドではまだまだWindows 7のシェアが高い

このようにWindows 10とWindows 7のシェア逆転は少なくない地域でみられる一方で、StatCounterによる世界全体での集計結果は2016年12月時点でWindows 7が40.23%、Windows 10が27.15%と大きく開いている。同様に、NetMarketShareによる2016年12月の集計結果でもWindows 7が48.34%、Windows 10が24.36%とやはり倍近い差がある。

この違いはどこで生まれているのか。その答えはStatCounterで中国のシェアを調べればすぐに分かる。同国ではWindows 7のシェアがいまだ5割近くあり、なんとサポートがとっくに終わったWindows XPのシェアも2割近いのだ。Windows 10も伸びており、2016年12月にはWindows XPを抜いてシェア2位となったものの、他の地域とはトレンドが大きく異なる。

全体的な国の数やユーザーの数としては、前述のような先進国よりも新興国の方が多く、それらは中国に近いシェアの推移だと推察される。

 

米Microsoft Corporation傘下のSkypeは3日(現地時間)、公式ブログ“Skype Blogs”で、Windows デスクトップ版およびMac版「Skype」の旧バージョンが、3月1日以降ログイン不能になることを明らかにした。

対象となるのは、「Skype for Windowsデスクトップ」v7.16およびそれ以前のバージョンと、「Skype for Mac」のv7.0からv7.18まで。同社は「Skype」のアーキテクチャーの近代化を進めており、従来のピア・ツー・ピア(P2P)からモバイル端末との親和性の高いクラウドへの移行が進められている。今回の措置は、それに伴うものであるようだ。

なお、最新版の「Skype」では動作速度と応答性の改善が図られたほか、複数の端末でチャットログがすばやく確実に同期されるようになっているとのこと。また、グループでのビデオメッセージ、ビデオメッセージの保存、クラウドを介した最大300MBまでのファイル共有なども利用可能。モバイル端末とのグループビデオ通話が利用できるなどのメリットも得られる。

米Microsoftは1月19日(現地時間)、「Windows 10」のWindows InsiderのFast Ring向けに最新版「Build 15014」をリリースしたと発表した。



このリリースで、これまで今春公開予定の「Creators Update(コードネーム:Redstone 2)」で追加するとしていた「My People」機能の追加を、先送りにすることを明らかにした。

My Peopleは、「ピープル」に登録してあるユーザーで頻繁に連絡する相手をWindowsのタスクバーにピンしておくと、そこからメール、メッセージング、Skypeなどの様々な手段でやり取りを開始できるカード状のツール。

先送りの具体的な理由は不明だが「われわれがWindowsで目指しているのは、ユーザーが愛してくれる体験を提供することで、次期アップデートではこの機能の追加を見送ることにした」という説明になっている。

Build 15014では、Windows Storeで電子書籍を購入してEdgeで読書できる機能や、Cortanaのデザイン変更、ストレージに余裕がなくなった場合に不要そうなファイルを自動的に削除する機能(初期設定では無効)などが追加された。これらはCreators Updateで正規版に追加される見込みだ。

米Microsoftは12日(日本時間)、Windows 10 Insider Previewの「Build 15007」をFast ringでPCおよびモバイル向けに公開した。

PC向けビルドでは、Edgeブラウザにタブのシェア機能、IEブラウザからのデータインポート機能、ダウンロードしたファイルの即時実行および、保存ボタンと保存先指定保存ボタンの統合が行なわれた。Webノート機能にも、Windows Inkが対応し、ペンまたはハイライターをタップすると、Windows Inkフルセットと「Build 14986」でリリースされた新しいスライダーが表示される。

また、「Build 15002」でアナウンスされた、Windows StoreからOSテーマをダウンロード可能となる機能も、近日中に利用可能となる予定。

Cortanaのアップデートでは、所有するPCで中断した作業をほかのPCで再開する場合のアシスト機能として、直前に使用していたEdgeブラウザのWebサイト、SharePointほかクラウドベースのドキュメントなどを表示できるようになった。

そのほか、通知エリアでのダウンロード状況などの進捗バー表示、Windows Helloによる顔認証のUX改善、キーボードショートカットによるすスニッピングツール操作などが可能となった。

モバイル向けアップデートでは、Azure Active Directoryを利用しての設定同期、Edgeブラウザ用の新Payment Request APIのプレビューサポート、ハイコントラストモード時のUWPアプリの視認性向上、PC版で実装されているアプリのリセット機能などが実装されている。

PCとモバイル共通のアップデートとしては、新Bluetooth APIの実装、スクロールバー表示の改善(マウスオーバー、スクロール時のみ拡大表示)などが行なわれている。

修正された問題は、PC版ではBluetoothのオン/オフ後にSurfaceペンのクリックが機能しない問題、ロック画面でWindows Helloが「カメラをオンにできません」というエラーを出す問題、Netflixアプリで動画ではなく黒い画面を表示する場合がある問題など。

モバイル版では、システム関連の通知(Bluetooth、USB/自動再生など)が機能しない問題、ポートレートモードで記録されたビデオが正しいアスペクト比で再生されないことがある問題、Bluetoothオン時に再起動するとGoodbye画面に電話が掛からないという問題、Outlookカレンダーでライブタイルに間違った日付が表示される問題、通知監視アプリ(ウェアラブルアプリなど)が通知にアクセスできなくなっていた問題などが修正された。

既知の問題としては、本ビルドに更新後、Spectrum.exeサービスのノンストップ例外が発生しEdgeブラウザなどのアプリケーションが反応しなくなる問題、新ビルド(15002以降)のインストール中、バグチェックにより以前のビルドにロールバックされる問題、Win32ゲームで特定の要素をクリックするとゲームが最小化され元に戻せなくなる問題、“%”を含むデスクトップショートカットでexplorer.exeがクラッシュする問題、セカンダリモニタへ“拡張”表示を設定するとexplorer.exeがループクラッシュする問題、設定>システム>表示で変更した明るさが設定アプリを終了した後に反映されない問題、高DPIデバイスでタスクバーのプレビューアイコンが予期せず縮小表示されてしまう問題などがある。

米Adobe Systems Incorporatedは10日(現地時間)、「Adobe Flash Player」の最新版v24.0.0.194を公開した。本バージョンは脆弱性を修正した月例のセキュリティアップデートとなっている。

同社が公開したセキュリティ情報(APSB17-02)によると、今回修正された脆弱性の件数はCVE番号ベースで全13件。深刻度は同社基準で4段階中最高の“Critical”で、最悪の場合、攻撃者にシステムを乗っ取られる恐れがあるという。

脆弱性が影響する環境はWindows、Mac、LinuxおよびChrome OSで、更新プログラムの適用優先度は、Linux版を除くすべてのプラットフォーム版で“1(72時間程度以内を目安とした可能な限り迅速なアップデートが必要)”とされている。

「Adobe Flash Player」の最新版は、現在同社のWebサイトから無償でダウンロード可能。自動更新機能が有効になっていれば、通常24時間以内に自動でアップデートされる。

なお、Windows 8.1の「Internet Explorer 11」用、およびWindows 10の「Internet Explorer 11」「Microsoft Edge」用の「Flash Player」の最新版は“Windows Update”を通じて提供される。また、「Google Chrome」用の「Flash Player」は、「Google Chrome」のアップデートやコンポーネントアップデーターにより自動で最新版へ更新される。

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米Amazon.comは2016年12月27日(現地時間)、ホリデーシーズン商戦の結果を発表し、スピーカー型スマートデバイス「Amazon Echo」の販売が前年比で9倍になるなど、同社のAI(人工知能)搭載アシスタント「Alexa」関連のデバイスが数百万台単位で売れて好調だったと伝えている。


本連載でも先行するAmazon Echoに対抗すべく、米Googleも同種のデバイス「Google Home」を発表し、さらに米Microsoftもサードパーティーとともに、音声アシスタント(この場合は「Cortana」)に対応したWindows 10 IoT Core搭載デバイスの投入を計画していると報じたばかりだ。実際、Amazon Echo好調の発表は、今後スマート家電が進んでいく方向性を示唆している。

今回のAmazon.comの発表には、注目すべきもう一つのデータが含まれている。それは世界のホリデーシーズン商戦において、モバイル端末を使って買い物をしたユーザーが全体の72%以上に上るということだ。

かつて、オンラインショッピングと言えば家でPCから……というのが定番だった。自宅の固定回線で高速かつ安定したネットワーク環境を確保し、PCの広い画面で比較検討しながら製品選びをするというスタイルだ。しかし現在、こうした購入スタイルは過去のものとなりつつあり、一般ユーザーの行動様式も急激に変化している。

モバイルアプリやWebサイト向けに決済サービスを提供する米Stripeのパトリック・コリソンCEOによれば、「現在はまだPCの決済比率の方が高いが、今後1~2年で状況が大きく変化する可能性がある」という。

今回はこうしたトレンドを背景に、2017年のMicrosoftとWindowsが進む道について考えていきたい。

●ネット通販はPCからスマホへ、店頭から客足が遠のく

ホリデーシーズン商戦で起こっていたことを、別の調査結果も参照しつつ、もう少し考察してみよう。市場調査会社のNPD Groupによれば、商戦期における実店舗(いわゆるブリック&モルタル型店舗)への客足が10%ほど減少し、(オンラインも含む)全体の売り上げが4%マイナスの微減傾向にあったという。

NPDのデータは実店舗とオンラインの両方を含んでいるため、客足と売り上げの減少幅のギャップはオンラインショッピングに顧客が流れていることを意味すると考えている。Best BuyやTargetなどオンライン販売を強化している既存の小売店もあるが、こうした流れの中でオンラインに特化したAmazon.comの利用が進んでいるのは言うまでもない。

もう注目したいのは、Amazon.comの「モバイル利用が大きく伸びている」という部分だ。1年前にさかのぼり、2015年末のAmazon.comにおけるモバイルユーザー比率を調べてみると70%で、前年比で倍に増加したという。つまり、モバイルユーザーの比率が急増したのはここ2~3年の傾向だ。

さらに気になるデータとして、Pew Internet Researchが2015年末に出した「Home Broadband 2015」がある。2013年と2015年の家庭におけるブロードバンド利用状況の調査だが、全ての大人世代でブロードバンド回線の利用率が3%減っているのに対し、ブロードバンドはないがスマートフォンを所有している割合が5%増加している。

これはアフリカ系米国人や低所得層、高齢層ほど顕著で、恐らく今から1年後、2017年の調査報告ではさらに加速していると予想される。Pewが2000年代前半に行った調査報告では、低所得層ほどブロードバンドやPC利用率が低く、このデジタル格差を解消するためにもPC利用の訓練や公共の場でのPC環境提供が必要と提言していた。

しかし、今やファーストデバイスとして高機能なスマートフォンに触れ、そのままメインのインターネット接続環境として利用できる状況だ。今後は低所得層や若年層を中心にこのトレンドがさらに全体へと拡大し、「パーソナルな意味でのPC」はもはや過去のものになりつつあるのかもしれない。

●ARM版Windows 10による常時ネット接続型PCの可能性

先日、米国のMicrosoft Storeに立ち寄ったとき、Windows 10 Mobileの代わりにAndroidとiOSを搭載したスマートフォンとタブレットが店内でクローズアップされている様子を報告した。

これはOffice 365などのMicrosoft製品やアプリ、サービスを紹介するためのコーナーなのだが、このファーストデバイスの分野でMicrosoftは既にプラットフォーマーではなく、サービスやアプリを提供する一事業者にすぎない。

もちろん、Officeはそれ単体でキラーアプリと言えるが、かつて「WinTel」などと呼ばれ、MicrosoftのWindows OSおよびIntelのプロセッサが支配的な地位にあった時代に比べて、コンシューマーIT市場における影響力は明らかに下がっている。

ただ、Microsoft自身もこの状況は理解しており、まずは「PCにおける常時接続環境」を推進する可能性を考えている。

本連載でも「QualcommのSnapdragon向けにフルバージョンのWindows 10が提供される予定」について紹介したが、これは「ARM SoC(System on a Chip)搭載のPCが発売される」というだけでなく、「Qualcommのチップセットが搭載された常時ネット接続型PCが登場する」という可能性も考えられる。

2016年初頭に「Microsoftが“Microsoft SIM”を提供してWindows Store経由でデータプランを購入できるようになる」といううわさが出ていたが、こうしたサービスを提供することで、少なくともAppleの「iPad Pro」のように「購入してデータプランを契約すれば、誰もが好きな場所でいつでもインターネットに接続しつつ、スマートフォンより高性能で高機能なデバイスを利用できる」ようになる。

現状でもSIM搭載モバイルPCや2in1デバイスは存在するが、その数は限られている。こうした(Windows 10 Mobileではない)Windows 10のARM SoC対応は、冒頭で紹介した「ファーストデバイスがPCからスマートフォン(もしくはタブレット)へ」という一連の流れに、ある程度の歯止めをかけられるかもしれない。

●本当にスマートフォンがポストPC時代の覇者なのか?

現状のトレンドを見る限り、スマートフォンがかつてPCが担っていたパーソナルなコンピュータの市場を奪いつつあるようにも思える。

しかし筆者は、スマートフォンは数ある「入口」のデバイスの1つであり、シェアこそ最大であるものの、これが世界のルールを決めるような決定的な存在にはなり得ないと考えている。

冒頭で触れたAmazon Echoが代表例となるが、「入口のカタチ」は別にPCやスマートフォンのようなディスプレイを内蔵した製品である必要はない。音声アシスタントのAlexaのように、デバイスの先にある存在との対話インタフェースさえ確保できれば入口になり得るわけだ。その意味で、ポストPC時代のパーソナルなデバイスは「多種多様なインタフェース」を持ち、今もなおその将来像はカオスな状態なのだと思う。

音声対話が全てとは考えていないが、将来のコンピュータはより賢くなり、人間の生産性を向上させるうえでの最良のアシスタントとして機能するようになるだろう。ゲームやSNSなどの遊びの要素はあるが、現在PCやスマートフォンで行っているタスクは自動化されるか、あるいはアシスタントとしてコンピュータがその多くを担うようになる。

Microsoftは現在クラウドのAzure事業やCortanaのようなAIアシスタントの機能強化を積極的に行っているが、これら仕組みをデバイス全体を横断して提供できるベンダーほど競争面で優位に立てる可能性が高い。

そのときは、特定のベンダーに依存した仕組みであるよりも、よりオープンな仕組みのほうが好ましい。この点では、iMessageなどクローズドな仕組みをプッシュするAppleが競合他社に比べて不利なのではないだろうか。

Windows 10 IoT CoreでのCortanaサポートは、こうした流れを受けたMicrosoftの先行投資的な意味合いが強いと言えそうだ。

いずれ、あらゆるデバイスがスマート化して互いに接続され、アシスタント的に振る舞う世界を想像してほしい。そのときインテリジェンスな存在は手元のデバイスではなく、その先にあるクラウドの上でわれわれを見守っている。

本当のポストPC時代とは、このように緩やかにネットワーク接続されたデバイス同士がクラウドを通じて連携して、ユーザーのさまざまな行動を補助する仕組みのことを指しているのではないだろうか。

●PCはクリエイターの世界へ深く入り込む

このように、ポストPC時代にPCがなくなるわけではなく、ユーザーを補助するデバイスの1つとして存在し続けることになるだろう。この場合、PCはどのような役割を担うのかという点だが、「よりクリエイティブな方向」に向かうと多くの人は考えているに違いない。

2016年末掲載の記事で、Windows PCのエンタープライズへのシフトがさらに進みつつあることに触れた。しかし、エンタープライズでも一般的な事務用途や特定の生産性向上アプリケーションを使うレベルにおいては、かつてのメインフレーム時代のホスト端末のような管理性に優れた単機能型デバイスが採用される可能性がある。

これにAIアシスタントが加わる形で、多くの一般的なユーザーはコンピュータのキーボードやマウス、タッチパネルに向き合う時間は減ることになるかもしれない。

そして、エンタープライズやコンシューマーを問わず、クリエイティブ方面の人々がPCに残り、PCもまたクリエイティブ方面へとすり寄っていく構図が、2017年以降の数年間で見られるようになると予想する。

既にその兆候は、今春に配信される予定のWindows 10次期大型アップデート「Creative Update」や、日本への投入が期待される大画面の液晶一体型デスクトップPC「Surface Studio」と、全く新しいダイヤル型入力デバイス「Surface Dial」にもみられるが、Microsoftはコンテンツを作る側と楽しむ側の両方に訴求しようとしている。

コンピュータを使ってユーザーが行うことが限定されていく中で、汎用(はんよう)デバイスとしてのPCと相性がいいのがクリエイティブの世界だ。

またMicrosoftは「Windows Holographic」をWindows 10に盛り込み、幅広いユーザー環境で利用できるように開発を進めている。Windows HolographicのプラットフォームがもたらすMR(複合現実)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)の世界は、PCの可能性を測るうえで非常に大きなウェイトを占めている。

Windows Holographicや先行して投入されたWindows 10搭載のMR対応HMD(ヘッドマウントディスプレイ)である「HoloLens」で実現されるMR、VR、ARの世界は、これまでPCやスマートフォンが縛られていた「スクリーンサイズ」という概念を打ち破る点で非常に興味深い。

これまで、「のぞき窓」のように限られた空間を目の前のスクリーンを通じて眺めていた世界が、VRやARになることで空間が無限に広がる。遊園地のアトラクションや映画のような没入型体験だけでなく、クリエイターにとっても目の前の広大な空間全てを使って作業が可能なわけで、使い方次第ではより効率的で高度な作業が可能だ。

Creators Updateと、それに続く2017年後半の配信とみられる大型アップデート「Redstone 3(RS3)」は、WindowsにおけるMR、VR、ARの世界を地ならしする存在であり、Windows Holographicの提供開始はこれらが広く一般に利用されるきっかけとなる。

2017年後半には、Microsoftが言うところのメインストリームPCでもWindows Holographicが利用できるようになり、このプラットフォームに対応したサードパーティー製HMDが299米ドルからの低価格で発売される見込みで、幅広いWindows PCでMR、VR、ARの世界が楽しめるようになるわけだ。これらが全て出そろうのには、2017年いっぱいかかるだろう。

実際に大きな成果が出るのは、そこからさらに2~3年先かもしれないが、「ポストPC時代に自らの役割を見つけたPC」が見られるであろう2017年が楽しみだ。

米Microsoftは2017年に向けた新たな施策を対外的にアピールし始めている。「PCやスマートフォンの形状をしていない新しいカテゴリーのWindowsデバイス」の世界の展望が見えつつある点に注目したい。

●新しいWindows 10デバイスの予兆

同社は12月8日(現地時間)に中国の深センで開催したハードウェア開発者向けイベント「WinHEC Shenzhen 2016」にて、「Cortana and the Speech Platform」と「Windows 10 IoT: Build trusted, easy-to-manage, and interoperable devices」という興味深い2つのセッションを行った。

これらは米Amazon.comが米国で販売している音声制御対応の無線スピーカー「Amazon Echo」のような新しいデバイスにWindows 10を搭載し、OS標準の音声対応アシスタント「Cortana」で音声制御を可能にする仕組みを用意しようという試みだ。

同件については、2017年3月にも一般提供が始まるとうわさされるWindows 10の次期大型アップデート「Creators Update」において、Cortanaに「Far-field」と「Wake on Voice from Modern Standby」という機能がサポートされ、マイクから離れた場所での音声によるPC(Windows)制御が可能になると、米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏も紹介している。

そして、この仕組みはIoT向けのWindows 10である「Windows 10 IoT Core」のディスプレイ搭載デバイスにも展開されることとなり、これがMicrosoft版Amazon Echoと呼べるような新デバイスの登場につながるというわけだ。

本稿では用語解説をしながら、その動向をみていこう。

●Windows 10 IoT CoreのCortanaサポートに注目

Windows 10 IoT Coreとは、従来は「Windows Embedded Compact」と呼ばれていたWindows OSの製品ラインだ。Windowsファミリーの製品としては、最も動作フットプリントが小さい部類に入る。

.NET Compact Frameworkでのプログラミングが基本となっており、現在は主に「Raspberry Pi」などのARM SoC(System on a chip)を搭載した小型の「ボードPC」での利用が進みつつある。「Raspberry PiでWindows 10が動く」と一時期IT業界で話題になったのは、このWindows 10 IoT Coreのことだ。フルバージョンのWindowsを特定用途向けにカスタマイズした「Windows Embedded」シリーズとは異なる製品ラインなので注意したい。

このWindows 10 IoT Coreは、通常のPCよりもメモリ容量が小さく、プロセッサパワーも貧弱な組み込み環境での利用を想定している。最低要求メモリサイズが256~512MB、ストレージ容量が2GBと、現在もなお制御系機器で動作しているマイコンに比べればはるかに大きいが、アセンブラでの記述も当たり前な組み込みの世界において、Windowsの開発環境やリソースをそのまま持ち込める点でWindows 10 IoT Coreはメリットがある。これは今後登場する家電や産業機器の開発においてコスト削減につながる可能性が高い。

なお、Windows 10 IoT Coreでは搭載されるデバイスによって要求メモリ仕様が異なり、「Headed(ディスプレイ付き)」が512GB、「Headless(ディスプレイなし)」が256GBとなっている。これはWindowsのビデオサブシステム利用の有無が、ディスプレイの有無で変化するためだ。

今回、Windows 10 Creators Updateの提供タイミングで、Windows 10 IoT Coreもディスプレイ付き(Headed)デバイスについてはCortanaがサポートされることが示されており、2017年には実際に「Windows 10 IoT Core+Cortana」によるAmazon EchoライクなWindows 10デバイス製品が市場投入される可能性が高くなった。

●Amazon EchoとGoogle HomeにMicrosoftも追従か

Amazon Echoについても説明しておくと、これは2015年6月にAmazon.comが米国で発売した「スピーカー」だ。もちろん、単なるスピーカーではなく、音声入力でさまざまな機器を制御したり、スピーカーを通じて情報を取得したりできる「スマートホームを体現したような製品」と言える。

スピーカーの向こうには「Alexa」と呼ばれる音声アシスタントがクラウド上に存在し、音声コマンドで音楽や映像の再生を指示したり、さらには今日の天気予報やニュースを取得したりと、Amazon版のCortanaやSiriとも呼べる仕組みをAmazon Echoに入れている。

Amazon.com自体はMicrosoftのようにOSプラットフォームを用意したり、Appleのように全てのジャンルを網羅するような専用ハードウェアを販売したりはしていない(Fire TVやKindleのような製品はあるが……)。一方で、Amazon EchoはAPIを公開するなどサードパーティーによるサービスや関連製品のリリースを推奨しており、スマートホームのエコシステムを構築することを目指している。

これは実に興味深い動きだ。米Googleは2015年夏に開催した開発者会議「Google I/O 2015」において同種の「Google Home」というデバイスを発表して追随している。またAppleが同種のデバイスを開発しているといううわさは長らく業界に存在しており、iPhoneやiPad、Mac製品以外にもSiriやHomeKit的な仕組みを拡大する可能性がある。

Microsoft自身はCortanaを長年にわたって提供しており、主にモバイル方面からユーザーにアプローチしていた。しかし今回同社がCortanaのアップデートで目指しているのは、PCを直接操作できない少し離れた距離での利用、さらにはPCが設置されていない場所での利用にある。Windows 10 Creators Updateでは、ポストPC時代を見据えたMicrosoftの次の一手が見えつつあるだ。

●Windows 10 Creators UpdateにおけるCortanaの動作

Windows 10 IoT Coreに限らず、PCを含むWindows 10 Creators Update全般におけるCortanaの動向についても触れておきたい。CortanaはもともとモバイルOSの「Windows Phone 8.1」で初めて搭載され、スマートフォンを利用するユーザーに「持ち歩ける音声アシスタント」を提供することを主眼としていた。2014年4月発表のCortanaよりも先行して2011年に投入されていたAppleのSiriも同様だ。

Cortanaが目指したのは「パーソナル」な音声対応アシスタントであり、これはWindows 10 for PCに展開されてからも変わらず、基本的には「PCの目の前に座っているユーザーとの対話」に重点が置かれている。「Xbox One」ではテレビとの物理的な距離があるため、もう少し離れた距離での音声制御を想定しているが、おおむね近接距離(Near-field)での対話に主眼が置かれている。

しかしWindows 10 Creators Updateでは、Far-fieldという遠距離からの音声制御と、デバイスがスリープ状態にあってもCortanaを音声コマンドで呼び出せるWake on Voice(WoV)の仕組みがあらためて明記されている。これは従来のPCの使い方を越えたホームユース、例えばAmazon Echoのような新デバイスの登場を想定したアップデートと言える。

●Far-fieldとNear-field

現在Windows 10に搭載されているCortanaは、ユーザーがPCの目の前にいて操作していることを想定している。Microsoftによれば0.5m程度の距離での利用が目安だ。これはCortanaの制限というよりも、PCに内蔵されたマイクの性質による。

ゲーム実況などライブストリーミングを行っているようなユーザーは専用のマイクやWebカメラを用意して、より広範囲の映像や音声を収録できる環境を整えているかもしれないが、実際に多くのユーザーがノートPCやデスクトップPCを使っている環境はそうではない。

PC内蔵あるいは外付けの標準的なマイクは、ユーザーがあくまでPCの正面に向き合っていることを想定し、外部からのノイズを極力取り込まず快適に利用できるチューニングとなっている。

しかし、Cortanaを複数人で操作したり、あるいは離れた場所にあるPCに音声コマンドを通じて操作したりといった活用を考えた場合、このマイクのチューニングでは困る場面が出てくる。うまく音声を取り込めず、Cortanaに話した内容が伝わらないからだ。

そこで、遠距離からの利用を想定したマイクのチューニングや搭載方法が必要となる。例えばMicrosoftが「Premium(P)」と定義しているマイクは、有効範囲が0.8m程度と若干広くなっており、複数人の操作や環境音楽のより高品位な取り込みが可能だ。

そして今回Microsoftが定義したFar-fieldは、最大で4m程度からCortanaを利用することを想定している。Xbox Oneを利用するケースで、テレビからの距離は大体2m前後が一般的であることを考えれば(日本ではなくリビングの広い国ではもう少し離れているかもしれない)、4mというのはかなりの遠距離だ。家庭内でちょっと広い部屋の端から端くらいまで届く距離があると考えてよいだろう。

この距離でユーザーの音声を正確に聞き取るには、デバイスに専用のマイクを配置したり、チューニングしたりが必要となり、一般的なPC向けの仕様ではない。これは「既存のPCの形状ではない専用デバイス」など、設置型マイク経由での利用に特化したデバイスでの搭載を想定したものと推察する。その意味では、Amazon Echo型のWindows 10デバイスというのはまさに理にかなったカタチではないだろうか。

●Wake on Voiceによるスリープからの音声制御

ロックスクリーンが出ている状態でもCortanaの制御が可能な仕組みは既にWindows 10に搭載されているが、現在のMicrosoftが目指しているのはその先だ。具体的にはスリープ状態であっても「Hey Cortana」と呼びかければ、いつでもマシンが復帰し、入力した音声コマンドを実行できる状態に持ち込むことが目標となる。これがWake on Voice(WoV)だ。

WoVの機能は疑似的には簡単に実装できる。例えば、ディスプレイの電源を落として省電力動作モードに移行し、ユーザーから「Hey Cortana」と呼びかけられるまでずっと待機していればいい。ただ、標準状態ではディスプレイがオフの状態になってからしばらく後にスリープ状態へと移行してしまうため、ユーザーに了承をとったうえで「スリープ移行禁止」のモードを用意する。AC電源に接続されていることが前提となるが、デスクトップPCではアリな選択だろう。

次に利用するのが、Intelプロセッサの「S0ix」ステートなどと表現される新しいタイプのスリープ状態だ。Windows OSでは、Windows 8以降に「InstantGo(Connected Standby)」の名称でタブレットPCや2in1に対応が進んでおり、CPUが通常の稼働状態を示す「S0」のステートでありながら超低消費電力での動作が可能で、かつ通常のスリープ状態と比較しても復帰が早い。

InstantGoのメリットは、タブレットPCで使わないときは画面を消してバッテリーを極力消費しない省電力モードへと移行し、バックグラウンドでのネットワーク通信や情報のアップデートは行うといった、いわゆるスマートフォンやタブレットのような使い方がPCでも実現できることにもある。

Microsoftではこの種の待機型スリープ状態を「Modern Standby」と表現しており、これにWoVを組み合わせる方策を検討している。S0ixのステートでは断続的ながら実質的にCPUが通常動作しているので、ソフトウェア的にWoVを実装するのは容易だ。このようにソフトウェアで音声認識によるキーワードを抽出する仕組みを「Software Keyword Spotter」と表現する。

ただし、スリープ状態からの復帰ラグなどの関係で、Software Keyword Spotterでは音声の取りこぼしが発生する可能性がある。そこでMicrosoftがPremiumと定義しているマイク環境を備えたデバイスでは100~200ms(ミリ秒)程度の音声バッファを取得できる仕組みを用意するよう推奨している。

そして次のステップとしては、CPUやチップセットが完全にスリープ状態にある、いわゆる「S3(スタンバイ)」の状態でもWoVが利用できるよう、専用ハードウェアの追加でサポートする「HW KWS」を実装していきたい意向だ。

どのようなPCやデバイスでこのような仕組みが必要になるかは分からないが、いずれは「キーボードやタッチ操作を必要としないPC」が登場する世界も予想され、未来のPCへと一歩近づくことになるかもしれない。

いや、未来のPC……と呼んでいいのかは分からないが、かつてPCだったデバイスが未来にどのような形状をもって家庭に鎮座しているのか、その答えの1つはAmazon Echoに見いだせるだろう。

●Cortana対応デバイスの開発キットも用意

MicrosoftはCortana対応デバイスの開発を支援するため、「Cortana Skills Kit」と「Cortana Devices SDK」を2017年早期に一般公開すると発表した。この開発キットを先行提供されたパートナーのHarman KardonによるCortana搭載スピーカーの動画も公開されている。

まずは第一歩だが、2017年は「既存のPCとは異なる新しいデバイス」の展望が見えるようになることに期待したい。

キーボードが壊れたら交換するしかないが、そんな時は、ソフトウェアキーボードが利用できる。

キーボードが壊れた時の対処法を教えて
キーボードが壊れたら交換するしかないが、目の前の作業を終わらせなければいけないこともあるだろう。そんな時は、ソフトウェアキーボードが利用できる。タブレット端末で文字入力するための機能だが、Windows 10ならどのPCでも搭載されている。

Windows 10にサインインする前なら、右下の「コンピュータの簡単操作」アイコンから「スクリーンキーボード」を起動すればいい。サインイン後にキーボードが使えなくなったのなら、スタートメニューから「すべてのアプリ」→「Windows簡単操作」→「スクリーンキーボード」をクリックすれば起動する。

スクリーンキーボードはマウスで操作でき、入力に邪魔ならタイトルバーをドラッグして自由に移動できる。右上のキーを押すと、HomeやPrtScnキーなども利用できる。さらに「上/下に表示」でキーボードの位置を瞬時に移動させたり、「固定表示」で画面下にキーボードを隙間なく展開したりできる。

これでズバッと解決!

「Windows簡単操作」メニューから「スクリーンキーボード」をクリックして起動する。後はマウス操作でキー入力ができるようになる

WinHEC 2016 Shenzhenの詳報をお伝えする。会場となった中国・深圳は、各種ハードウェア生産の拠点であり、いまや多くのデジタルデバイスが、ここから巣立っていく。その関係で、この地ではここ数年、マイクロソフトのハードウエア開発者向けカンファレンスとしてWinHECが開かれているのだが、特に今年は、非常に大きなサプライズのあるイベントとなった。


■突如発表「Snapdragon版Windows」の正体とは

最大の驚きは、基調講演の後半で発表された、Qualcommとの電撃提携だ。今まで、Windows PCといえば「Intel」か「AMD」のx86系CPUで動くもの、と相場が決まっていた。しかし今回、Windows 10の全機能がQualcommのSnapdragonに供給され、Snapdragonを使ったWindows PCやタブレットの開発が可能になる。

基調講演では、Snapdragon 821を使ったシステムでのデモが行なわれたが、x86版のAdobe Photoshopも動作し、「今までと変わりなくPCとして使える」ことがアピールされた。すなわち、Windows Phone向けの「Windows Mobile」や、2012年にマイクロソフトが発売した「Surface RT」版のWindowsのような「用途限定版」ではない、ということだ。

基調講演後、米Microsoft Windows & Devices担当上級副社長のテリー・マイヤーソン氏に、筆者を含む日本プレスが詳細を聞いたところ、以下のようなことがわかってきた。

まず、Snapdragon版Windows 10は「フル機能の64bit版Windows」であり、OSそのものはARMのコードで書かれている。顧客の求めに応じて32bit版にすることもあり得るが、今は通常の64bit版。だからメモリーも、PC同様4GB以上使える。

Snapdragon版には、x86向けに書かれたアプリケーションをエミュレーションする機能があり、x86版のアプリケーションがそのまま動作する。OSに付属のアプリ類、例えばEdgeやメモ帳などの一部はARMのネイティブコードで動くものの、OS付属のアプリであっても、x86版のまま、エミュレーションで動く場合もある。

ただし、グラフィックスやIOなどはOS側でARMに最適化されているので、エミュレーションせずに動作する。アプリケーションの動作状況は、そのアプリがどれだけCPUでの処理に依存しているかで変わるが、マイクロソフトとしてはパフォーマンスにも十分な自信があるようだ。デモでは、Photoshopの他にWordの動作と、1080pのビデオ再生、ブラウザー上にペンで手書きする、といったことが行われた。どれもデモを見る限りは、十分快適な動作に見える。

仕組みとしては、「Bash on Windowsとかなり似たようなサブシステム」(マイヤーソン氏)で動いているが、詳細は後日発表されるという。

ここで「ARM版」と書かずに「Snapdragon版」と書いているのは、マイクロソフトの姿勢による。マイヤーソン氏は、「Qualcommとは非常に密接な関係で仕事をしている。今までのPCにおける、IntelおよびAMDとの関係と同じだ。だから、当面他のARMプロセッサーメーカーと提携する予定はない」と言う。すなわち、QualcommのSnapdragonというSoCシリーズに特化したものとして供給されるのだ。

Snapdragon版を用意することになった理由を、マイヤーソン氏は「顧客のニーズが広がったため」と話す。要は「もっとスマホっぽい」PCを求める声があり、そこでQualcommが良い実績を出しているので、Snapdragon版を用意することでデバイスの多様性を上げたい……、ということのようである。

マイヤーソン氏(以下敬称略):エンタープライズ向けのセキュリティが重要な部分や、ハイパフォーマンスPC、ハイパフォーマンスゲーミングなどでは、やはりIntelの方が向いています。一方で、特に若年層を中心に、アイドル時の消費電力が低く、ワイヤレスネットワークとの親和性が高いデバイスを求める声もある。すべては顧客の選択です。

すなわちマイクロソフトとしても、いきなりIntelやAMDとの関係を破棄してPCを作る、ということではない。ちなみに、Windows 10向けにどのくらいの規模のSnapdragonをターゲットとするかについては、「Qualcommの判断に基づく」(マイヤーソン氏)とされた。基調講演に登壇した、Qualcomm Technologies 上級副社長 兼 Qualcomm CDMA Technologies 社長 クリスチアーノ・アモン氏は、「14nm・10nmと、複数の世代のSnapdragonで長期的にサポートしていく」とコメントしている。おそらくハイエンド製品からのサポートになるのだろうが、少なくとも「1製品での短期サポート」を想定したプロジェクトでないことは伝わってくる。

今回、2017年初め(だが、2月に開催されるGDCではまだ公開されていない可能性があるようなので、「春」に近いのかもしれない)の公開が予定されている、Windows 10の大型アップデート「Creators Update」では、ゲームを中心に、HDRへの対応も強化された。4K+HDRのようなハイパフォーマンスの部分は、当面IntelもしくはAMD、ということなのだろうが、カジュアルに使えるタブレットなどでは、Snapdragonを採用する例が出るのは間違いない。

実際にSnapdragon版を採用した製品が出るのは、2017年、それも後半とみられている。

■Windows Holographicは「2017年末には500ドルのPCでOK」に

もうひとつ、今回のトピックだったのは「Windows Holographic」だ。マイクロソフトは以前より、この12月にWindows Holographicの詳細を発表するとされており、ここは予想通りといえる。

発表されたのは、「Creators Update」の中で、マイクロソフトのVR・MR(Mixed Reality)技術である「Windows Holographic」を標準機能にすることだ。対応機器を用意すれば、WindowsでVR・MR空間を使った作業が出来るようになるし、VRアプリケーションも活用できるようになる。

公開された対応HMDメーカーは、HP、ASUS、Lenovo、Dell、Acer、3Glassesの6社。そのうち3Glassesの「S1」が、壇上でデモに使われている。

米Microsoft Windows and Devices Group Technical Fellowであり、HololensとWindows Holographicの顔としても知られるアレックス・キップマン氏は、利用可能なスペックなどについて、次のように説明している。

キップマン:現在、VRのような体験をするためには、1,500ドルのPCが必要です。しかし我々がアナウンスしたCreators Updateからは、すべてのハイブリッド・グラフィックスを持つ機器で利用可能になります。例えばSurface Bookでもいいですし、Razor Bladeでもいいです。これまでに比べずっと低いスペックのPCで利用可能になります。

そして、2017年のホリデーシーズンには、Kabylake(筆者注:先日出荷が始まった、Intelの第7世代Coreプロセッサシリーズ)を搭載したすべてのPCの統合グラフィックチップで動作可能になります。すなわち、2017年のホリデーシーズンには、500ドルのPCでMixed Reality体験が可能になる、ということです。

なにができるのか、基調講演のデモをベースに解説してみよう。

ヘッドセットをかぶると、目の前には室内を模した空間が広がる。ここが仮想のワークスペースだ。壁にウェブブラウザー(Edge)を貼り付け、その中でサッカーの試合をストリーミングで見たり、3Dで作られたアプリケーションを体験したりできる。いままで、2Dの画面の中の2Dのウインドウに閉じられていた体験が、「視界がすべて画面になる」(キップマン氏)ことで、より多彩な体験として生まれ変わる。もちろん360度ビデオの再生もできる。

すべてのアプリケーションが動作し、目に見える体験は変わらないようだが、機器によって解像度や、酔いにくさを含む体験は異なるようだ。そこは、機器に対するコストの問題と、機器を「どういう方向性の使い方に合わせて作るのか」という観点で変わってくる。

キップマン:解像度はデバイスによって異なります。ただし、従来のパネル解像度ではなく「1度あたり何ドット」とう単位で考えるべきです。

例えば、Hololensは「1度あたり47ドット」で、目の限界に近いもので、ドットが見えません。視野角は狭くなりますが、一方で、ドット密度は高い。ぜひ、今のVR・HMDでテキストを読んでみてください。きっとできませんよ。8ポイントフォントを読めるのは、Hololensだけです。安価な製品だと、「1度あたり10ドット」のものもあります。

これはトレードオフです。エコシステムを作り、その中でどういうチョイスをするかは消費者次第です。私は、Hololensを選びます。エンタープライズ向けの用途でも、フルスクリーンのテキストを読むにも、Hololensのようなデバイスが適しているでしょう。

一方、ゲームをするには、もっと大きい視野角が求められます。一般的なVRヘッドセットは120度の視野角ですが、結果、ピクセルが見えてしまう。しかしそれはあまり気になりません。

すなわちこれは、「迫力重視・没入感重視で解像度を落とす」か、「解像度重視で視野角を狭くするか」というトレードオフの関係、ということだ。映像を見たりゲームをしたりするには、通常「迫力重視」だが、解像感重視のHololensと同じアプローチでも、美しい映像が楽しめる。

そこで、様々なデベロッパーに「それぞれ特徴のあるデバイス」を作らせて、コストや用途で選択させよう、というのがマイクロソフトの戦略、ということになりそうだ。

キップマン氏によれば、もっとも安いWindows Holographic対応ヘッドセットは「299ドル程度」になるとのこと。そうすると、仮に500ドルのPCと組み合わせても800ドル。今までのVRシステムの半分程度で、PlayStation VRのコストに近くなる。

一方、今回デモに使われた3GlassesのWindows Holographicデバイスは、2,880×1,440ドット・704ppi・120Hzのハイエンドパネルを使い、499ドルと高い。その性能を活かすには、当然ハイエンドのPCが必要になる。こちらは良い体験になるだろうが、価格もそれなりになる。また、マイクロソフトからはHololensと同じようなコンセプトのデバイスを作るための技術もライセンスされるが、こちらは、いまのところ3,000ドルで売られている製品。最高の結果を得られるが、より高価になる。

■パートナーを絞って「体験を担保」

安い低スペックなもので悪い体験になるのは、VRにとって望ましいことではない。だがこの点については、ある程度安心していいかもしれない。

キップマン:PCのように、誰もが作れるわけではなく、すべてのOEM・ODMが希望すれば作れる……というわけではありません。

我々はいくつかのパートナーを選んでいます。長いパートナーシップを組み、ともにエンジニアリングができるところを、です。開発は簡単なものではないので、とても深いパートナーシップを彼らとは組みます。

興味をもってくれるすべての企業と話はしていますが、その中で我々がパートナーとなり得るところを選んでいるのです。

ですから、Windows PCのビジネスモデルとは、大きく違うものです。センサーや光学デバイスをタイトに組み合わせる必要がありますから。End to Endでの体験を、少数の、深い関係を築いたパートナーと作っていきます。

すなわち、ある程度体験が「揃った」製品を出す、というポリシーをもって、Windows Holographicのビジネスを行なうことで、品質・体験の担保を試みようとしているのだ。

残念ながら今回は、記者がオープンに試せる試作機が用意されておらず、「Windows Holographicがどういうものになるか」を体感することはできなかった。2017年2月、サンフランシスコで開催される「Game Developer's Conference(GDC)」には、今回発表された機器のデモンストレーションが用意されるとのことなので、実際の販売はさらに先、春以降になりそうだ。

米Microsoft Corporationは2日(現地時間)、Windows 10の次期バージョン「Windows 10 Creators Update」では管理者権限なしでシンボリックリンクを作成できるようになることを明らかにした。公式ブログ“Building Apps for Windows”によると、この機能は「Windows 10 Insider Preview」Build 14972から利用が可能。Build 14971でも利用できることを編集部で確認している。


シンボリックリンクとは、フォルダーやファイルの実体を参照する“仮想的”なフォルダーやファイルのこと。たとえば、Windows XP時代に使われていた“C:Documents and Settings”フォルダーは、現在のWindowsには用意されていない。しかし、その存在を前提とした古いソフトのために、互換性を維持する目的で“C:Users”を指し示すシンボリックリンク(ジャンクション)が置かれている。これにより、現在のWindowsでも“C:Documents and Settings”へのアクセスで“C:Users”を参照することができる。

この手法はLinuxの世界では一般的なものだが、Windowsではセキュリティ上の問題からシンボリックの作成に管理者権限が必要とされていたため、あまり利用されてこなかった。しかし、最近のWindowsでは“Bash on Ubuntu on Windows”がサポートされたほか、「Git」や「npm」などのツールを利用したクロスプラットフォーム開発が身近になってきている。そのため、シンボリックリンクの使い勝手をLinuxに合わせることがWindows開発者にとって有益と判断されたようだ。

なお、この機能はあくまでも開発者向けのものとされており、利用するには「設定」アプリから“開発者モード”を有効にする必要がある。“開発者モード”を有効化すると、管理者権限のない「コマンド プロンプト」からでも“mklink”コマンドを利用してシンボリックリンクが作成できるようになる。また、“CreateSymbolicLink”APIでも新設のフラグ“SYMBOLIC_LINK_FLAG_ALLOW_UNPRIVILEGED_CREATE”を用いることで、管理者権限なしでシンボリックリンクを作成できるという。